ナチュラルワン 第25話 「ナチュラルワン最期の日!?」

作:■石化・凍結・粘着拘束・石膏固めフェチ■その3スレの458さん

 

 

高坂早紀は苦悩していた。

相棒の天堂美奈が、迷子を家に送りに行ったきり帰ってこなかった。

GGDの襲撃を受けたであろうことは想像に難くない。

そして、おそらく美奈はもう…

「あたしのせいだ… あたしの…」

正義の戦士としてのスカウトを受けた際、早紀は二つ返事で承諾したが、美奈はあまり乗り気では無かった。もともとインドアタイプの大人しい少女であったので、戦いという言葉に抵抗を感じたのだ。

そんな美奈がナチュラルAとなることを承諾したのは、正義に燃える早紀の説得あってのことだった。

自らの正義感を押し付けたがために、親友は消えてしまった。 その事実に、早紀は押しつぶされんばかりの自責と後悔の念に囚われていた。

「ごめん… ごめん美奈…」

自室のベッドに突っ伏し、目を泣き腫らした早紀の姿は、普段の勝気な彼女からは想像もつかないものだった。

不意に、機械的なメロディーが奏でられる。メールの着信音だ。

「誰だろ…?」

無気力に携帯電話を手に取る早紀。 だが画面を見た瞬間、その顔色が一変した。

『天童みなは与かった。 帰して欲しくば、こちらの視程する場所に一人で来い。 GGD

「(罠…か。なんか誤変換が多いのが気になるけど…)」

敵の目的は明らかだった。 一人となり、切り札を失った自分を始末するつもりなのだろう。 あまりにも見え透いた、誘い。

だが、美奈を人質にされたとあっては、乗らないわけにはいかない。 大切な、本当に大切な友達なのだから。

指定の場所を確認した早紀は、大急ぎで家を飛び出して行った。

 

 

 

 

「ここね。」

GGDが指定してきた場所は、とある港の廃倉庫だった。 人の気配はまったく無く、罠を仕掛けるには最適な場所だ。

「(とりあえず、そろそろ変身しとかなきゃ。)」

早紀は大きく深呼吸をして心を落ち着かせると、変身の体制を取る。

「変身! ナチュラルB!」

一瞬の閃光の後、早紀はナチュラルスーツに身を包んでいた。

ボディスーツにショートパンツ、両手足のプロテクター。

動きやすさを重視したその衣装は、少々色気には欠けるものの、早紀の健康的な魅力を十二分に引き出していた。

「魔を切り裂く絶対の剣! 大自然の戦乙女、ナチュラルB見参! って、誰も見てないけど…。」

変身を終えた早紀は、改めて廃倉庫を見据える。

無論、ここに美奈がいるとは限らない。 最悪の場合、生きてすらいないかもしれない。 だが、僅かでも可能性があれば全力でぶつかるのが早紀のモットーだった。

「美奈…無事でいて。」

ささやかな希望を胸に、早紀は倉庫の扉を開け放った。

 

「な、何これ…」

倉庫内を見渡した早紀は言葉を失った。

そこには何人もの女性達が、ぴくりとも動かずに佇んでいた。

凍っているもの、石と化しているもの、透明な物体に閉じ込められたもの…

色とりどりの彫像と化した彼女等は、大型のガラスケースに収められていた。

その側には、ご丁寧に作品名らしき文字が書かれたプレートまで置いてある。

さらに早紀を驚かせたのは、彼女達の殆どが今の自分と同じような格好、すなわち変身ヒロイン風のコスチュームを身に纏っていることだった。

裸の像も多いが、よく見るとグローブとブーツが見て取れるものもある。

「この人達って… もしかして"大自然の意思"が言ってた先代のナチュラル戦士かな?」

早紀は以前"大自然の意思"に聞いたことを思い出していた。

自分達以前にも"大自然の意思"に導かれ、悪と戦ったもの達がいたこと。

突如現れたGGDという強大な組織を前に、多くの戦士が敗れ去ったこと。

おそらく、ここにあるのは敗者の亡骸なのだろう。

「なんてことを…!」

早紀は両の拳を強く握り締める。

自分も敗れればこうなるのではという恐怖もあったが、人間を置物にするという非道に対する怒りが恐怖心を吹き飛ばしていた。

「って、こんなことしてる場合じゃなかった。 美奈を探さなきゃ。」

はっと我にかえった早紀は、胸元から剣の形をしたペンダントを取り出す。

「ナチュラルブレード!」

早紀の叫びとともに、ペンダントは身の丈ほどもある大剣へと変化する。

早紀はそれを軽々と一振りすると、慎重な足取りで歩み始めた。

 

「美奈っ!」

倉庫の最も奥、比較的開けたスペースに美奈はいた。 いや、あったと言うべきか。

美奈は石の十字架に磔にされ、それと一体化したような状態で石像と化していた。

うすうす予想してはいたが、いざ変わり果てた親友を目にすると、早紀はもはや冷静ではいられなかった。

脇目も振らずに駆け寄り、すがり付く。

「美奈っ、美奈っ。 ああ、どうすれば元に戻るんだろ…」

狼狽する早紀。

その瞬間、背後に殺気が生まれた。

「!」

間一髪で飛びのいた早紀の腕を、鋭い爪が掠める。

初撃を外した襲撃者は、素早い動きでガラスケースの陰に逃げ込んだ。

「出たわね!」

早紀は素早くガラスケースに向き直ると、Nブレードを構える。

「出てきなさいよ。 それとも、そのガラスケースごとぶった斬って欲しい?」

「早紀おねーちゃん、やばーん。 この人達、一応まだ生きてるんだよ。」

返事とともに、ガラスケースからひょこっと小さな姿が覗く。

「あ、あんた…」

早紀はその少女に見覚えがあった。 あの時、裏路地で泣いていた迷子。 美奈が送っていったあの少女だった。

「(信じられない… こんな子供がGGD?)」

「ペトリナだよ、よろしくね。 あんまり油断しない方がいいよ。 美奈おねーちゃんもそんなこと言ってて、ああなっちゃったんだから。」

ケラケラと笑いながら、石となった美奈を指差す。

小バカにしたようなその態度に、早紀は声を荒げて捲くし立てた。

「あたし達を騙したのね、この悪ガキ!  美奈を元に戻しなさいよ! そうすれば半殺しで勘弁してあげるわ!」

「悪ガキなんてひどーい。 わたし、いい子だもん!」

「いい子は人を石になんてしないわよ! 漢字もろくに知らないくせに!」

「むぅ〜!」

ペトリナの額に青筋が浮かぶ。

「なによなによ、一人じゃ弱っちいくせに! もう怒った!」

ペトリナの髪が緑色に染まる。 さらに周囲の空間が歪むと、ガラスケースの群れが消え、灰色の景色が現れた。

「最初は手加減してあげるつもりだったけど… もう許さないからね! 思いっきりイジめてから石にしてやる!」

「許さない? それはこっちのセリフよ! 不利でも何でも関係無い! あんたをぶっ倒して、美奈を取り戻す!」

「いいのかなあ、そんなこと言っちゃって? 早紀おねーちゃんはもう負けたも同然なんだよ?」

この言葉に早紀は訝しげな顔をした。

ハテナ時空間に合体不能。 確かに非常に厳しい状況だが、まだ戦いは始まってすらいないのだ。

「そんなハッタリで、あたしがひるむとでも思ってんの?」

「ハッタリじゃないよ。 おねーちゃん、さっきわたしの爪に掠ったでしょ? あの時、ちょっぴりだけ石化毒を注入できたの。

量が少ないから時間はかかるけど、もうほっといたって石になっちゃうんだから。」

「なっ…」

言葉を失う早紀。

「でも、わたしは逃げたりしないから安心してね。 全力の全開で、わたしの悪口言ったことを後悔させてあげる…」

言うや否や、ペトリナの髪が爆発的に伸び始めた。

見る間にその質量を増した髪はペトリナの体をも包み込み、複雑に絡まりあいながら、灰色の空に向かって伸びていく。

「な、何!?」

危険を感じた早紀は大きく距離を取り、Nブレードを構えなおした。

不意に巨塔の先端ががばりと割れる。 その内部には鋭い牙が並んでいた。

さらに二箇所に裂け目が入り、奥から巨大な金色の眼が現れる。

それは野球場をも一巻きにできそうな、巨大な蛇だった。

「えへへ、びっくりした? びっくりしたでしょ? これがわたしの必殺技、タイタニックボアだよ。 早紀おねーちゃんが石になるまでの間、たーっぷり痛ぶってあげるね♪」

大蛇の頭にちょこんと腰掛けたペトリナが得意げに言う。

「くっ…」

さすがに焦る早紀。 脚が震えているのがわかった。

「(恐い…恐いけど、絶対に負けられない! あたしだけじゃない、美奈の命だってかかってるんだから!)」

ガチガチと鳴る奥歯を食いしばり、Nブレードを握る手に力を込める。

「何度も言わせないで…。 不利でも何でも関係無い!!」

恐怖を振り払うかのように叫ぶと、早紀は大蛇に向かって突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

「ブレイバースラッシュ!」

早紀は、気合とともにNブレードを大上段に振り下ろす。

大岩をも両断するその一閃は、しかし大蛇の鱗を数枚削ぎ落としただけだった。

鬱陶しげに早紀を尻尾で打ち据える大蛇。 早紀は石畳の地面に叩きつけられた。

「ぐぅ…」

「そんな攻撃じゃ無理無理♪ タイタニックボアの鱗はダイヤモンドの50倍は硬いんだから(怪獣名鑑より)。 そろそろ体も動かなくなってきたでしょ? あきらめちゃったほうが楽だよ。」

ペトリナの言葉どおり、早紀の体にはあちこちに灰色の斑点が見て取れた。 時間が経つにつれて体の違和感が増し、動きも鈍くなってきている。

「負け…られない… 負ける、もんか…」

それでも、早紀はよろよろと立ち上がると、Nブレードを構える。

体は既にボロボロだが、その瞳に宿る決意の色だけは、未だ衰える気配は無い。

「早紀おねーちゃんてば いじっぱりー。 もういいや。 そろそろ飽きてきたし、終わりにしちゃお。」

大蛇は尚も突っ込んでくる早紀に向かって大きく口を開く。

その口の奥から大量の髪の毛が放射され、早紀に襲い掛かった。

「このっ…」

早紀は足を止め、襲い来る髪を片っ端から切り払う。

だが、戦闘のダメージと体を蝕む石化毒とによって、その動きには明らかにキレが無くなっていた。

その上、髪は留まることなく押し寄せてくる。

程無くしてNブレードに無数の髪が絡みつき、思うように振るえなくなる。

早紀の全身が絡め取られるのに、そう時間はかからなかった。

「美奈おねーちゃんとおんなじポーズにしてあげるね。」

髪は早紀の四肢をグイグイと引っ張り、十の字の体制に固定していく。

「放し…なさいよ。この、糞ガキ…」

「ムッ、まだ言うかぁ。 もっともっと痛い目にあわせなきゃダメね。 ゴルゴンズバイト!」

開かれたままの大蛇の口から、今度は何匹もの蛇が出現した。

髪を伝わって早紀の元まで這い寄ると、腕に、脚に、一斉に噛み付く。

「うぐぁっ」

濁った悲鳴を上げる早紀。

傷口の周辺が瞬時に石化するため出血は無いが、それでもかなりの苦痛だ。

「石化毒の量は抑えてあるから、すぐには楽になれないよ。 早紀おねーちゃんには、いろいろひどい事言われたからね。 めいっぱい苦しめなきゃ、わたしの気がすまないもん。」

蛇達は尚も数を増し、次々と喰らいついてくる。 ペトリナの言葉どおり、噛み痕からの石化は非常にスピードが遅い。 おかげで早紀は長々と苦しみ続けるハメになった。

痛みに意識が朦朧となり、視界が霞む。 ペトリナの嘲る声がどこか遠く聞こえた。

「(嫌だ…負けたくない負けたくない負けたくない! あたしがここで負けたら美奈はどうなるの? あたしの勝手でこんなことに巻き込まれて、挙句石にされるなんて…)」

早紀の目に、心底楽しそうに自分を見下ろすペトリナの姿が映る。

「(この糞ガキを倒せば石化だって解ける。 そうよ、あたしがどうなったって美奈だけは…!!!)」

 

「あれぇ?」

ペトリナは眉をひそめた。

視線の先には、早紀と共にがんじがらめにしたNブレード。 髪の隙間から、その刀身が光を放っているのが見えたのだ。

「まだ何かするつもりなの? おーじょーぎわの悪い…」

その言葉は中断された。

Nブレードの光が早紀の体へ伝わったかと思うと、絡み付いていた髪の毛が一瞬で消し飛んだのだ。

あとに残ったのはNブレードを構えた早紀の姿。

「うそっ!?」

我が目を疑うペトリナ。 どう考えても、早紀にこれほどの力が残っているとは思えなかった。

Nスーツはところどころ破けているし、体も傷だらけな上、部分的に石化している。満身創痍だ。

「な、なんだか分かんないけど… タイタニックボア!」

大蛇はペトリナの呼びかけに答え、傷だらけの早紀に狙いを定める。

「やっちゃえぇ!!」

大蛇は大きく口を開き、巨体を震わせて突進する。 早紀を一呑みにするつもりらしい。

猛然と突っ込んでくる怪物に動じず、静かに大上段の構えを取る早紀。

再びNブレードの刀身が輝き、圧倒的な力が集結していく。

「絶対たる剣よ、邪悪なる者に裁きを! 必殺、ソードパニッシャー!」

振り下ろされたその一閃は、合体状態であるナチュラルワンの必殺技に迫るほどのパワーだった。

「うひゃっ!」

大蛇の頭に腰掛けていたペトリナは、慌てて攻撃の射線上から逃れる。

そのすぐ横を剣閃が通り過ぎ…

一瞬の後、タイタニックボアの巨体は縦真っ二つに断ち割られていた。

切り裂かれた大蛇の身体は石と化し、見る間に崩れ落ちる。

「き、きゃあああああっ」

頭上にいたペトリナはマトモに崩壊に巻き込まれ、瓦礫の中へと飲み込まれていった。

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ… か、勝った…。」

荒い息を繰り返す早紀。 その両膝がガクリと折れた。

倒れこみそうになる体を、Nブレードを杖代わりになんとか支える。 体重をかけられた刀身が、半ば近くまで地面に沈み込む。

膝を突いたはずみに、ポニーテールにまとめていた長い髪がほどけ、傷ついた体を優しく包み込んだ。

「痛っ… ちょっと、無理しすぎちゃったかな…。 でもこれで、これで美奈も元に…」

「戻りませんよ。」

「…え?」

不意にかけられた言葉に、早紀はキョロキョロと辺りを見回す。

「誰!?」

「面識はあった筈ですが?」

言葉と共に、大蛇の残骸の下から砂で出来たドーム状の物体が出現する。

ドームが崩れ落ちると、そこには異形の怪人が立っていた。

その足元には、大きなたんこぶをこしらえたペトリナが伸びている。

「まさか、一人で我が娘を退けるとはね。 あなたのようなタイプが稀に起こす奇跡には驚かされますよ。 影ながら見守っていて正解でしたね。」

「GGD幹部サンドラー…」

早紀は何度か相見えたことのある、その怪人の名を呟いた。

「覚えていてくれて何よりです。」

「くっ!」

痛む体を押して、立ち上がろうとする早紀。

だが立ち上がることはおろか、姿勢を変えることすらも出来なかった。

「体が動かない!? どうして…」

「石化毒が関節まで浸透しましたか。 貴女はペトリナの石化毒を少々甘く見ていたようですね。 その石化はたとえペトリナが気絶しようとも、止まることはありません。 一度体内に入ったが最後、ペトリナ自身がそう望むか、もしくはGGDの施設でしか治療は不可能なのですよ。 無論、完全に石化してしまった者が元に戻るなど、問題外です。」

「そ…んな…」

早紀の顔に、深い絶望の色が浮かぶ。 どんな苦境に立たされても闘志を失わなかったこの少女が、初めて見せた表情だった。

「まあ、貴女はよく戦いましたよ。 絶対に勝利不可能のところを覆したのですから。 その頑張りに免じて、お友達とセットで展示して差し上げましょう。 安心して石になりなさい。」

話している間にも、石化は確実に進んでいた。

全身に点在する石の染みが広がり、早紀のボロボロの身体を灰色に染め上げる。

密かな悩みの種であった平坦な胸が、程良く筋肉の付いた自慢の健脚が、硬く冷たく変質していく。

腕を伝う石化はNブレードをも侵し、絶対の剣をただの石塊へと変える。

先程まで全身を苛んでいた痛みすらも消えかけていた。

「う、うぅぅ、う〜〜〜」

悔しげにうめきながら、サンドラーを睨みつける早紀。 その目からは涙が溢れていた。

敵を前にして泣きたくなど無かった。 だが、生きたまま石と化す恐怖と屈辱に、そしてなによりも、親友を助けられなかった自分に対する不甲斐無さに、あとからあとから涙がわいてくる。

石化は無情に進み、潤んだ瞳を、乱れた長い髪を、ゆっくりと侵食していった。

「(ごめん美奈…。 あたし、ダメだった…。 友達なのに、助けてあげられなかった…。 ごめん、ごめん、ご…めん、ご…め……ん………)」

胸中を、親友への謝罪で埋め尽くしながら、高坂早紀は石像となった。

目尻に溜まっていた最後の涙が、柔らかさを失った頬を静かに伝った。

 

それは、この上も無く残酷な作品だった。

あちこちが破れたNスーツ、傷だらけの身体。 本来ならば一時のものでしか無い筈の傷痕を、半永久的に刻み込まれたその姿は、無惨としか言いようが無い。

両膝を折り、剣に体重を預けたポーズが、それに拍車をかける。

悔やみと怒りに歪んだ表情もまた、敗者の哀れさ、惨めさを痛いほど表現していた。

「ふむ、私の趣味からはかなりズレますが、なかなか味わい深い作品になりましたね。 複製は取っておいてやりますか。」

足元に横たわる娘に目をやりながら、サンドラーは言う。

「きゅぅ…」

当のペトリナは、自らの任務が完了したことにも気付かず、未だに目を回していた。

 

 

 

 

 

 

 

某所 GGD秘密基地

 

「ペトリナよ、任務遂行ご苦労であった。 ナチュラルワンはありがたく受け取っておこう。」

「えへへ、どういたしましてっ。 ところでボス、わたしは二人も固めたんだからもう一人前だよね? ちゃんとしたGGDメンバーになれるんだよね?」

「うむ。 そもそも、お前を呼んだのは正式に幹部認定を与えるためだからな。 今後も尽力を期待しておるぞ。」

「やたっ! ねえ、パパも許してくれる?」

「ボスの意向ですからね。 もはや何も言いません。」

「よーし… それじゃ、さっそく誰か固めてくるね♪」

「待て、用件はそれだけではない。 一つ聞いておきたいことがあるのだ。」

「へ?」

「何故、お前が我のコレクション倉庫の場所を知っていた? あの場所は幹部であるサンドラーとフリーザン以外には教えておらん筈なのだがな。」

「私もお前に話した覚えはありませんよ。」

「え、えっと、それはその… たまたまパパと氷のおじさんが話してるのを聞いちゃって…」

「まあそれは良い。 問題なのは、近頃コレクションが頻繁に複製品とスリ換えられていることでな…。」

「(ギク。)」

「調査の結果、その複製品は我がGGDの施設で製造されたものであることが判明した。 つまり、内部犯だ。」

「(ギクギク。)」

「さらに、お前が任務に行っている間に自室を調べたところ、盗まれたものと同じ作品群がゴロゴロ出てきたのだ。 これはどういうことかな?」

「そそそうなの? ぜぜぜぜ全然気付かなかったなー。」

「ちなみに、盗難品からはお前の指紋が検出されておる。」

「………………。 い、いんぼーよ! 誰かがわたしをおとしいれよーとしてるのよ!」

「サンドラー、処遇は任せる。」

「お任せくださいボス。 さてペトリナ、『お仕置き一週間コース』ですよ。」

「いやー! はなしてはなしてはなして! ごめんなさいパパ、ごめんなさいぃぃぃ…」

「やれやれ、コレクションの置き場所を変えねばならぬな…。」

サンドラーの小脇に抱えられ、じたばたと暴れながら退室していくペトリナを見ながら、ボスは溜息をついた。

 

 

 

 

後日、GGD秘密基地 幹部私室前廊下にて

 

「ん?」

GGD幹部の一人、フリーザンは同僚のサンドラーの部屋の前に奇妙なものが置かれていることに気付いた。

「おやフリーザン、私の部屋に何か用ですか?」

「いや、特に用は無いんだが…。 これは一体なんだ?」

フリーザンの指差した先には、砂で黄色くカラーリングされたペトリナが直立不動の姿勢で佇んでいた。

頬を膨らませた、不貞腐れたような表情を浮かべ、両手にはギッシリと砂の詰まったバケツを一つづつ下げている。

「見ての通り、昨日からお仕置き中です。 一週間コースなので、この状態であと6日間放置ですね。 意識と感覚は残したままですから、期間が終わる頃にはかなり反省してますよ。」

「…サンドラー、親切心で忠告しておくが、子供に過度の罰を与えると性格が歪むぞ。」

「分かっていませんね…。 既に歪んでいるから、こうでもしないと反省しないのですよ。 私も半ばヤケです。」

「そうか…」

 

「(腕痛いよ〜、脚疲れたよ〜。 パパめ、覚えてなさいよ。 今度コレクションにラクガキしてやる!)」

 

一人前幹部への道は遠い…

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

GGDに敗れ去ったナチュラルワン。

だが、石と化した二人の元に、一筋の光が降り注いだ。

 

次回「奇跡の大合体!」お楽しみに。

     予定は未定となっております

 

第24話へ   秘密結社GGDに戻る

動画 アダルト動画 ライブチャット